4 – 的外れな公団の渋滞解消策

拡幅だけで渋滞はなくなるのか

日本道路公団は東名高速の渋滞を緩和するためとして、今は厚木−御殿場などを現行 の片側二車線から三車線に拡幅工事中である。東名を走っていると、バラ色の未来を約束 する呼びかけをよく見かける。

「もうすぐ三車線に拡幅されます。渋滞の解消は間近です。お待ちください」
「少しでも走りやすくしたい。スマイル・ロード東名。三年間でレベルアップ」

呼びかけスローガンを目にする都度、道路づくりの順序を間違えたままでは、せっかく の三車線拡幅工事がはとんど効果をあげないのではないかと反発を感じる。
途中のパイプをいくら太くしても、出口部分が細いままであっては、太くした途中の流 れがよくなるわけはない。“糞詰まり”は少しも改善されない。三車線化の拡幅工事が全 くの無駄というのではないけれど、日本道路公団がまず手がけ、最優先すべきは東名高速 から首都高速用賀料金所一方向にしか行き場のない膨大な車群の逃げ道を作ること。雪隠(せっちん) 詰めを放置する日本道路公団の手違い方式には、ユーザーの側が、もう、うんざりさせら れっぱなしである。

東京の環状道路づくりだけが手違いではない。東名高速の横浜インターを常用する私に とっては、通る都度の出口渋滞に悩まされ続け、公団の先見性のなさを実感させられる。 出口の詰まりを解消しない限り、途中の流れをいくら改善しても効果はあがらない。公団 には初歩的なイロハがまだわからないのだろうか。

東名高速の上り線。皮肉なことに片側二車線の厚木インターまでは、車の流れが比較的 スムーズである。厚木から東京までは広い三車線。理屈からいけば、二車線が三車線と広 くなるのだから、車の流れはよくなって当然なのに、海老名SA手前あたりで、いつも渋 滞にひっかかる。車線が広がるのに、渋滞は悪化する。どうしてだろうと、初めは不思議 でならなかった。
何十回となく走っているうちに、やがて原因がわかった。横浜インターでの出口渋滞が 悪影響を及ぼし、待機車の滞留が本線の渋滞発生原因となって、十五kmも先の厚木近辺ま で車の流れが悪くなるのだ。
横浜料金所には十ヵ所以上のブースが設置され、大量の車群に対処する。それでもさば ききれず、上下線ともに数百台から数千台の滞留車両の長い列ができあがる。車列は東名 高速の本線上に及び、待機車の長さがほとんど常時、五kmとか十kmに達する。一車線では おさまりきらず、二車線を占領してしまう。
三車線道路のうち二車線がつまるので、走行用に使えるのは一車線だけとなる。道路幅 としては三車線に拡がったのに、機能するのは一車線と逆に狭くなる。だから、その一車 線まで動きがつかなくなる。横浜インターで降りる、降りないに関係なく、東京方面に通 行する全車両が渋滞の被害を受けるわけだ。

日本道路公団がどう改善策を講じたか。
横浜料金所へのアプローチ(接近する、乗り入れる)道路が、それまで一車線しかな かったのを、まず二車線に拡幅した。本線・通過車両への悪影響を少しでも減らそうとし たのだろう。おきまりの途中改善策である。しかし、アプローチ部分をいくら拡げても、 料金所の処理能力を高めないと、結局は渋滞改善効果がほとんどあがらないとわかった。 本線上へのはみ出し行列は相変わらず続いた。

人間を卑しくさせる東名横浜料金所

そこで公団は第二の解決策を講じた。料金所ブースを全面改造するとともに、レーンの 数を従来の十三から十八へとふやして処理能力を高めようと試みたのである。料金所窓口 の数をふやせば、支払いを待つ車の処理を数多くこなせる。行列を減らせる。単純な理屈、 計算ではそうなるはずだった。
結果はしかし、理屈どおりにならなかった。ブースで料金清算を済ませた車が前に進め ないために、後続の車が動けないという状況がますますはっきりするだけだった。料金所 窓口をふやしても、結果的には何の意味もなかった。

東名高速の横浜料金所を出た車群は、横浜市内方向と町田、相模原方向との二手に分かれ る。受け手となる道路は国道十六号線(大和バイパス)しかない。しかも、この十六号線 が悪名高い常時渋滞道路である。東名高速から溢れ出るマンモス車群の受け皿として、上 り横浜方向には保土ヶ谷バイパス、下り町田方向には大和バイパスが十六号線と平行する ように整備されたものの、これが受け皿としての機能を十分に発揮しない。保土ヶ谷バイ パスは自動車専用道に至るまでわずか数百㍍の間に四ヵ所の信号があって交通を妨げる。 大和バイパスもまた国道二四六号線と交差する場所が直近にあり、立体交差化していない ため、上下線ともすさまじい渋滞が深夜に及ぶ。

東名の横浜料金所を出て、国道十六号線に乗り入れようとしても、前に進めない状況が 常態化する。乗り入れのためのアクセス道路は一車線だけ。料金所を出た十列以上の車群 が一車線を目指し、ひしめきあう。目指す一車線で車が流れていればまだしも、赤信号に 妨げられて、ほとんど動かない。五分間かかって十m前進すればいいほうだろうか。一m 進んでは停まり、また二m進んではブレーキを踏むといった繰り返しである。
目指す一車線道路(互いに譲らず並行するかたちなので、ギリギリの二車線と化す)が この調子なので、そこに割り込もうとする横十列以上の車群は、十cmの空間を争いあって、 車体をこすりあう寸前での突っ込み競争を演ずる。毎度のことながら、接触事故が続発し ないのが不思議なほどの惨状。地獄絵さながらの闘争心向き出しの割り込みに、ほとほと うんざりさせられる。といって譲り合いでもしたら、いつまでも前に進めない。後続の車 からは抗議のクラクションを鳴らされる。ひるむ心を鬼にして、我先にと割り込み争いに 加わるほかない。

人間を卑しくさせる道路、ドライバーの品性を下劣にさせる道路、その典型的事例が東 名の横浜料金所出口付近で日常的に展開される。建設省や公団の首脳を現場に連れてきて 惨状をどう思うか、道路政策のどこが間違ってこうなったか、どう解決するかを問いつめ たい衝動にかられる。

専門用語で言えば、アクセス(接続、到達)道路の失敗。
車群がどっと流れ込む受け皿道路の直近に三つも四つも平面交差信号を放置するのが諸 悪の根源。初めから立体交差にして車の流れを妨げないようにしなければ、糞詰まり、雪 隠詰め道路と化すのは、当然の成り行きである。

川下工事を怠ったツケは利用者に

日本の道路づくりの手違い。それはアクセス道路の未整備が大半である。ネックとなる 場所にメスを入れずして、はかをいくら改善、改良しても、渋滞を解消できるわけがない。
川の流れを例にとると話がわかりやすい。川の流れをよくするために、まず手がけるべ きは川下か川上かの手順の問題である。川の流れが海に注ぎこむ河口の改良から手がける のが常識というものだろう。川の流れを良くする拡幅工事は川下から川上へと順次進めて いく。川下を狭いままに放置して、川上から拡幅していったら、川下で水が溢れ出るに決 まっている。
日本の道路づくりは、しかし、この常識に反して、川上から手をつける。東名・横浜イ ンターの渋滞解消手順の間違いが、はっきりと、そのことを物語っている。目先きの障害 物除去にばかり気を取られ、根本にいつまでもメスを入れないのである。その結果、どう なるかといえば、事業主体の日本道路公団には、もはや打つ手がない、お手上げ状況のま ま行き詰まる。

横浜インターの出口渋滞がネックとなって東名本線の三車線走行が事実上の一車線に狭 められる。通過交通の妨げとなる。そこでまず、アプローチのランプウェイを拡幅した。 今度はより川下の料金所がネックとわかり、料金所の処理能力を高めた。しかし、結局は 河口の詰まりがひどくなるばかりで、川上拡幅工事の効果がさっぱり生じない。
あとは受け皿の十六号国道を立体交差化して信号をなくすなり、ランプウェイの延長と して二階建ての出入り口専用道路橋を緊急増設するしか解決策はない。振り出しに戻って しまうわけである。しかも、最終ネックを公団が手がけようとしても、これが国道のため、 建設省の直轄となる。道路公団は手出しができず、政府に対し早期着工を要望するにとど まる。

同じ幹線道路でありながら、一方は国の直轄、他方は公団の管轄と分かれているために、 迷惑を受けるのが、利用者である。建設省がガメツイのは、こういう国道拡幅、改修工事 にまで、高速道路の渋滞解消のためだからと、道路公団に費用を分担させる。我々ユー ザーの払う通行料がこっそりと流用される。川下工事を怠ったツケが、結局は全く責任の ない利用者に回される。それでも早期実現すればともかく、川下工事はまだプラン段階。 完成は五年後、十年後に持ち越される見通し。踏んだり、蹴ったりとは、このことだ。

横浜インターの渋滞解消と同じ類の手違いは、それこそ全国至るところに続発中である。 一ヵ所で失敗すれば、その教訓を生かし、同じミスを繰り返さない。これが世間の常識で ある。しかし道路づくりでは懲りずに同じ失敗をいつまでも重ね続ける。救いようがない わけだ。そして手違いの極めつきが、東京都内の環状道路建設である。中央環状、外郭環 状、圏央道の建設立ち遅れが、どれほどに渋滞被害を深刻にさせるか。今はまだ序の口。 五年先、十年先には、もっともっとひどくなる。厚木−御殿場間など川上の拡幅工事が 進めば進むほど、皮肉なことに川下、河口の狭さが相対的にさらに悪化する。日本道路公 団は、その矛盾を熟知するはずなのに「渋滞の解消は間近です」と呼びかけて恥じない。
極楽とんぼそのものではないか。

コメント & トラックバック

コメントはまだありません。

コメントする

明日の日本、陸続きの日本、の実現に参加しよう、
活動費のカンパをお願いしています。
一口 1,000円です、
振込後 住所、氏名、年齢のメールをお願いします。
頑張って行きます。
==========================================
【金融機関】三井住友銀行
【支 店 名】高島平支店
【口座種別】普通
【口座番号】1787668
【口座名義】
 新党フリーウェイクラブ
 代表者 和合秀典

==========================================

Google Sitemaps用XML自動生成ツール