第4信 なぜ私が100円にこだわるのか ゲートのおじさんたちと話し合ったこと

本当は私とゲートのおじさんたちとは大の仲良しなのです。
最初は困惑顔のおつきあいでしたが、500円でゲートを通過したあと、よく皆さんと話したものです。
私は住所氏名を明らかにしていること。
だから、不法通行ではないこと。
2年8ヶ月で50%も値上げするのは異常であること。
それが法律で決まったことであれば法律に異常な部分があること。
そこを探しだして修正しなければならないこと。
公団の園田さん?の話だと30年たったら無料になること。

それが1993年にくること。
でも、おじさん考えてみてよ、今現在1兆7000億もある借金で無料にするには、最後の1年を通行料1回10万円にしなければならないということ。
その借入金利は私や一般の借入金利より法外に高いこと。
金利を下げれば値上げしなくてもすむこと。
そもそも天下の公道からお金をとることはおかしいこと。
私が500円で通ることは、おじさんたちの責任ではないこと。
会社には470円でディスカウントショップから買った首都高速券が用意しており他の人はそれを使っていること。
いずれ浅井さんと私が話し合いをするようになること。
立場は違うけれど、首都高速道路を良くしようという気持ちは同じであること。
だからしばらく私とおつきあいしてもらわなくてはならないこと。
皆さんは良く私の回りに集まって、熱心に目を輝かして話に聞きいったものです。
冬は寒いので料金所に入りこんで話をしたこともたびたびです。
職員の方たちとも話はつきません。時間がなくて行き先で再度会い、議論を交わし酒をくみ交わしたものです〔注：割り勘ですのでご心配なく〕。
ところが、私のことが記事としてマスコミに取り上げられるようになると突然！志村料金所とその料金所ゲートの様子が一変しました。
バリケードを張り、常時10人以上の職員を配属し、日曜祭日も実力阻止による厳戒体制に入ったのです。
協力工場の皆さんや、まわりの人たちはそのものものしい厳戒体制が私１人のためにされていることを知ってあきれはて大変な話題になったものです。
おまけに和合阻止の残業手当人件費が1ヶ月100万円というのですから、100円のために100万円がこんなに簡単に、無意味に使われということを皮肉にも知らされることになりました。
私が値上げ分の100円を払わないのは、値上げの理由に納得できないという以前に、値上げの理由がまったく不明だからです。
公団はわれわれ利用者にたいして値上げの理由を説明する義務があります。
案内標識がどうのこうのやトイレを増やすとかの問題ではありません。
もっとキチンとした納得できる説明がほしいのです。
われわれにはそれを要求する権利があります。
こういうかたちになるのは、われわれにたいして説明するものを持っていないということです。
それにしても気の毒なのはゲートのおじさんたちです。
定年を過ぎたおじさんたちがものすごい形相でたち向かってきます。
彼らに責任はないのです。
「100円払えッ！」
「これを浅井理事長にわたして下さい、おじさんたち落ち着いて話を聞いて下さい」
「100円払えッ！」
若い職員に混じって、車を叩いたり車の前に立ちはだかったり押したりします。
「100円払えッ！ 100円ッ！ 100円ッ！100円ッ！100円ッ！」
おじさんたちのセリフはこれしかありません。
あなたの命令がおじさんたちにとって、いかに苛酷であったかを物語っています。
若くて体力のある職員の方たちはそれでよいのでしょう。
定年を過ぎたおじさんたちを私のことで追いつめたのは愚かな行動でした。
あなたが説得できないものをなぜおじさんたちが説得できましょうや。
私は、とうとう裁判所に訴訟を起こしました。なぜ？だと思いますか。
このままでは事故が多発すると思ったからです。
あなたの部下、職員諸君の行動には事故を起こそうとした節があります。
フリーウェイクラブは今後も旧料金の500円通行をします。
あなたには、われわれの通行料金から多額な人件費を投入してわれわれの行為を実力阻止する権利はないはずです。
日本は法治国家なのです。5月25日裁判所に訴訟を提出して1週間後、久しぶりに志村料金所より首都高速道路を使用させていただきました。
「やあ、和合さん久しぶりですね。」
昔の友情の復活です。
「やあ、おじさんも元気かい」
「はい元気にやっています。和合さんも頑張って下さい」——とは言いません。
ともあれ、お互いの立場を尊重しつつ新しい友情を育む時がきたのです。
まさしく嵐のような北風から暖かい南風に変わったのです。
ねぇ…関さん?。
1988年7月10日
フリーウェイクラブ 和合秀典
首都高速道路公団理事長 浅井新一郎殿