第6信 強制徴収だなんて脅かしといて 私、待ってます

渋滞電話のお話をしましょう。
いつものとおり、高島平から志村料金所を通り目黒方面へと首都高速道路を利用させていただきます。
と……護国寺を過ぎたあたりでもう渋滞です。
さっそく車の中から貴公団へ渋滞電話です。電話に出られた職員の方もご迷惑と思いますが、つきあっていただきます。

和合 もしもし。
職員 あッ、和合さん？困るなあ、また500円で通ったの。
和合 だめだよ、この渋滞は。事業計画の失敗じゃないの？
職員 ちゃんと600円払ってくれれば、こんなことならないのッ。
和合 前の車はちゃんと600円払っていたけど、やっぱし渋滞だよ。
職員 そうだよ、皆が和合さんに迷惑しているんだよ。
和合 俺が100円を払えば渋滞が解決するの？
職員 あたりまえですよ、和合さんが100円払えばいいんですよ。
和合 よしッ皆さんのためだ100円払うよ。取りにきてよ。今払うからJAFでもよこしてよ。
職員 ダメッ！JAF車1台いれたら、渋滞が1台増えちゃうから。よくわけがわかりません。
こんな調子で渋滞が終わるまで続きます。この問題に出会ってから、自動車電話の料金がいつもの3倍になりました。
和合 それで強制徴収はいつやるの？待ちくたびれちゃうよ。
職員 今検討中です。首を洗って待っててよ。
和合 待つのはいいけど、もう半年は待ってるよ。もう首が赤くなっちゃったよ。
それにしても本当に差押さえができると思ってるの？
職員 法律で決まっているからできるよ。
和合 ああ、あの法律?ね、だけど私は「不法通行」ではないよ。
職員 600円に決まっているのに、500円しか払わなければ不法でしょう。
和合 私が払うか、払わないかは裁判所で決めるよ。
職員 ？？？？？。600円払いなさいッ！
和合 本当のことを教えてあげようか。公団は差押さえができるけど、できないよ。
職員 ？？？！♯＄％＆＜＠＠＊＊＋＠％♯♯＄＄￥￥＠♀♂：……？？
和合 どうしたんだい、頭の中で人工衛星が回っているのかい。それをやったらまんがになってしまうということだよ。
方法は3通りあるよ。１つは不動産をさしおさえること、しかし金額が不足分に割り増したとしても3万円だよ、これはできるけどできない、非常識ものだものね。
２つ目は電話債権を押さえることができる。しかしこれも公団はやらないね。現在本当の不法通行が1日2000人もいるじゃあないか。
今回は私が名乗りを挙げて堂々とやっているから問題なのだよ。
たかが100円とるために860円の切手を貼って催促状に経費をかけたり、1ヶ月100万円物和合阻止の人件費をかけて実力阻止したりしているのだよ。
公団が差押さえする目的はお金ではなくて、懲らしめるためだから電話債権など差押さえても表に出ないし、世論へのPRにならないから意味ないよ。
だからこれもやらない。ちなみに電話はそのまま使えるよ。
３つ目はいよいよ裁判の執行のおでましだ。できる可能性としたらこれだけだ。
職員 それで、どうなるんだい。
和合 よし君だけそっと教えておこう。内緒だからだれにもいっちゃあだめだよ。
職員 わかった、教えてよ。
和合 そのクジにあたった執行官はかわいそうだと思うよ。切ない顔して私の家にくるだろう。だいたいこんな情景が展開されるよ。

執行官 えーと、そんなわけで差押さえにまいりました。
和合 で、金額はおいくらですか。
執行官 3万円です。
和合 それじゃあ、どうしますかねえ。3万円というとテレビか、冷蔵庫それとも……まぁまぁ 一服して下さい。
今お茶をいれますから。今日はだれもいませんので私のお茶でがまんして下さい。
執行官 どうもすみません。ああ、おいしいお茶ですね。一応テレビということにしますがどうでしょうか。
和合 どうぞどうぞ。
執行官 競売ということになりますが、落としますか。
和合 いえいえ公団の方は、私が100回記念ということでやったと思いますので、そのまま使わせていただきます。
この次は200回記念ですから、来年の秋頃でしょうかね。 お会いできるのは。
執行官 その時私が来れればよいのですが、まず無理だと思います。しかし公団も大人げないですね。
浅井さん自身が出てきて和合さんとお話しなさればいいのに。
和合 まぁまぁ、そうおっしゃらずに、彼も一生懸命やっているのですから。
執行官 どうも長居をしました。ここに１つ印をお願いします。はい、これで結構です。
それじゃあ、これで失礼します。
和合 どうもご苦労様でした。

和合 とまあ、こんな具合で終わるだろう。公団の権威もなにもないじゃあないか。
差押さえなんて言うとどんなことになるのかと皆さん思うだろう。たいしたことじゃあないんだよ。
職員 ううん、なるほど。
和合 おそらく君たちの間でも賛否両論だったと思うよ。世の中には2種類の問題があると思うよ。法律そのものの問題と法律以前の問題だよ。
得てして、その2種類の問題では今回のように法律以前の問題のほうが強いものだ。
重ねて言うけど今回の私の行動は法律以前の問題なのだよそれを君たちは「道路管理者として絶対に許せない」などと尊大ぶるものだから、 マンガになってしまうのだよ。
だから浅井さんも不法通行するやからとは、会うことはできないなどと尊大ぶる必要はないのだよ。ゆえに強制徴収と言うのはできるけどできないということだよ。
職員 じゃあ、どうすればいいんだい。
和合 答えはいろいろあるけど、まず私を取りこむことだよ。ああ、やっと渋滞が終わりそうだよ。
職員 いろいろ迷惑かけますね。じゃあまた。……あッ100円100円！ と、まあこんな具合です。
1988年7月24日
フリーウェイクラブ 和合秀典
首都高速道路公団理事長 浅井新一郎殿