第10信 世界はわれわれをどう見ているか 外国人ジャーナリストに映った 日本の不思議

よく公園などでキャンバスに向かい絵を書いている人たちがいます。彼らは一心に絵筆を動かします。
時々3メートル位離れて絵の全体像を確認します。そしてまた書くことに没頭します。
筆を操作して絵を書く作業はその部分しか、つまりミクロ的にしか見えません。時々離れて見るのはマクロ的に把握するためです。
われわれは日本の中にいるので日本のことはよく解っているつもりです。
しかし、世界の中の日本はどうなっているのか、全体像はどうだろうか。
現在、われわれが直面している問題は世界から見るとどんな具合に見えるのだろうか、という作業を時々する必要があります。

ロイ・ガーナさんという外国の雑誌社の方から取材をされました。
難しい日本語は解らないということで急遽、仲間に通訳を頼み同席してもらいました。
例のごとく私の首都高速道路談義が始まります。食事をしながら1時間ばかり、取材に応じました。
さて、取材が終わり雑談に入ります。すると彼は面白いことを言い出しました。
「和合さんの話が本当だとすればわれわれには到底考えられません。
私たちの国にゴールデンブリッジという橋があります。この通行料は長い間1ドルでした。
ある日通行料が1ドル50セントに値上がりしたのです。
あくる日から誰がリーダーシップを取ったものでもなく、皆で打合わせしたわけでもないのに、利用者全員が1セント玉を150枚ゲートで出したのです。
係員はその処理に時間がかかりゲートは長蛇の列です。これに利用者全員、誰も文句を言う人はいません。
しごく当然のごとく自分の順番を待ちます。その値上げは3日間でつぶれました。もとの料金に戻ったのです。
しかも、このニュースは地方のローカル新聞1社に小さなコラムとして出ただけです。
本当に失礼ですが、じつは初めあまりこの問題に興味がありませんでした。社が行けと言うのできました
。でも、和合さんの話を聞いているうちにほかの疑問が出てきました。
それは日本人の不思議さです。われわれの感覚では全員が支払いを拒否します。これは当然です。日本人はな
ぜ自分の意見を公然と言い、公然と行動しないのか?
これは大きな疑問です。
こんなふうに考えていくと、日本には政治や行政に対して疑問や不満がある時、それを解決する方法がないことに気がづきました。
どんなに、おかしなことでも決められたことは守るのが日本人なのですか?自分の意見はないのですか?
これだけ理不尽な制度を守りながら、どうやって経済大国になりえたのか、その理由がどうしてもわかりません。これは興味あるテーマです。
それにしても、和合さん、あなたは日本人なのにどうしてですか?」
この問題は強烈なインパクトがありました。とっさに、どう答えてよいのかわかりません。
それでも胸をはって答えました。
「ガーナさん、それは今までの日本人です。これからの日本人はそうは行きません。
良いことは良い、悪いことは悪い、政府が言おうが、公団が言おうが、変わりのないことに、われわれは気がづいたのです。
日本は、もっともっと世界にはばたき貢献します。これはそのプロローグなのです。」

1週間後、英文雑誌?が届きました。
2ページにわたって大きなカラー写真入で載っていました。世界7カ国に送られて行くそうです。
7月5日、外国人記者の方から取材をうけました。
ロベルト・ワイマントさんといいます。ワイマントさんは、まだまだ日本語暦が浅く通訳の方を同行されました。
ここでも首都高速道路の1問1答が彼を驚かすのに充分でした。彼は言ったものです。
「和合さん、私も会員になります。私が旧料金通行したら日本を追い出されてしまうのではないのですか。」
「ワイマントさん、それは私が保証します。安心しておやりなさい。」
この記事の日本語訳をお見せします。イギリスの新聞?です。
仲間が訳したまったくの直訳なので読みづらいと思いますが意味をくみとって下さい。

「日本の消費者たち
和合秀典さんは長い間苦しみを被ってきた1億700万人の日本人の1人に過ぎなかった。
きのこ(まつたけ)が1つ40ポンド(約9,200円)、高速料金(高速全線の端から端まで)153ポンド(約35,200円)もするこの国で、
和合さんにできたことといえばただ(腹だたしさのため) 歯ぎしりし、極端に高い商品とサービスをものともせず、
習慣的なガマン(不平をこぼさず男らしく堪え忍ぶこと)をしてみせることだった。
ところが、46年の歳月を経たある日、和合さんのガマンの貯水池は干上がってしまった。
自宅から首都高速の料金所に来てみると、料金は20%、500円から600円に値上がっているではないか。
彼は旧料金を払いはしたものの、それ以上払うのを拒み料金所を通りぬけた。
<本当にバカげていると思いました>ト和合さんは回想する。
<道路公団が値上げの通告をしたのは1日前だったのです。>
昨年(1987年)9月のその日は何人ものドライバーが彼に追従した。
しかしながら、そういったドライバーたちと違って、小さな鋳造工場の社長である和合さんは今も新料金を拒みつづけている。
彼は一躍有名になったものの、それで尊敬されるわけではない。
なぜなら、この社会では対決するということは極端に嫌われ、強調が最高の美徳であり、頑健な人間はうさんくさがられるからである。
公団は3万円の未払いのかどで和合氏を告訴すると脅しをかけている。
時々こわおもてのやからが行く手をさえぎろうとするが、<日産プレーリーでいつも行く>と彼はいう。
羽翼の人間が脅迫状を送りつけてくるし、ののしり電話もかかってくる。
こういったことは消費者ゲリラに参加する日本人にとっては日常茶飯事である。
他の先進国をみても、これほど消費者がつけこまれやすい国はない。
日本では何百もの消費者団体があるが、多くは既得権益にごまかされ、ほとんどが無力である。
政府省庁は、消費者団体への主要な義務は産業と農民を保護することだと考えている。
このため輸出業者が海外市場で負けないだけの値段(時にはダンピングと呼ばれてる)をつけるのを補助する(つまり海外市場で安くした金額分を補助する)ための法外な値段を消費者に強いているのだ。
先月発表された調査によると、日本の買い物客は、アメリカに比べ6倍も高い米、9倍もする肉を買わされている。
また、ECCの統計によると16の先進国のうちで物価(及びサービスの関係の値段)の伸びは日本が1番大きい。
円高にもかかわらず高速料金も世界で1番高い。
青森から九州まで1,200マイルを高速道路で行くのに35,000円もかかる。
料金値上げ反対のためのクラブをスタートさせた和合氏は、日本人が勇気を持って立ち上がり声高に叫ぶことを望んでいる。
欧米人ならそうするだろう。
<この国の人間は問いかけをすることなく承諾してしまう、そういう態度がわれわれを前の大戦に導いたのだ>」

感想はどうですか、浅井さん。あなたと私の茶番劇も世界から見るとこうなるのです。
1988年8月21日
フリーウェイクラブ 和合秀典
首都高速道路公団理事長 浅井新一郎殿

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