第6回 渋滞電話から始まった公聴会公述人への道第

●今年こそ値上げがあるぞ

時の流れもたまには味なことをやります。
行政側から見ると犯罪者であり目の上のタンコブである、あの和合がです。
できることなら抹殺したいと思っているのであろう、この和合がです。
とにかく、今や700円の通行料金のところを断固として500円で通っているあの和合がです。
驚くまいか、首都高速道路公団の値上げ公聴会の公述人として大演説をぶったのです。
公団の値上げの最高セレモニーの場である天下の公聴会に、なぜ出席できたのか?馬鹿げたことだらけの、くそ面白くもない首都高速道路公団で、初めて吹いた涼風です。
93年はなにかある、との予感は年初からしていました。

従来3年ごとにキチンと100円ずつ値上げしてきた公団が,600円の料金改定時の大騒ぎから6年間、値上げを見送っている。
500円通行の破壊力を目の当たりにして、1回分の値上げをパスせざるを得なかったのでしょうが、いくら何でも今年はやるはずだ、と。
ここで200円の値上げをしなければ、放漫経営の公団財政は破綻することは私も計算済みでした。
しかも、今回は何としても世論を納得させた上で踏みきりたいところで、そのためにはあらん限りの無い知恵を絞って、とにかく和合をつぶさなければなりません。
となれば今年こそは待ちに待った、首都高とのデスマッチだと、心は期待ではちきれんばかり。さあ、ドスコイ、ドスコイ。

●それは渋滞電話から始まった

例の差し押さえ事件で和合つぶしが失敗し、さしもの公団も次の一手がありません。
一方で、時代は大きく方向転換します。
自民党一党支配が崩壊し、細川護煕連立政権が誕生し、公団を管轄する建設省の大臣に、何と社会党の五十嵐広三議員が就任しました。
ざまあ見ろ公団め。
今に見ていろ!と天にも昇る心地でした。
時代の転換期は、一度方向が定まると、次々と新しい流れを創造します。
ところが、我慢し切れなくなった公団は、時代に反旗を翻し、ついに値上げの公聴会を開催すると発表しました。
さあ、どうしてくれようか、とりあえずはジャブで様子をみようと、公団和合担当の関さんと渋滞電話。
できることからとりあえず実行するのが、待ちの発明家のいつもの手法で、そのうちに道が開けてくるのが常です。
なお渋滞電話とは、首都高の利用中に渋滞にぶつかった時に自動車電話を入れ、出口まで職員の方に付き合っていただき、利用者の意見を聞いてもらう、和合流コミュニケーションです。
「理事長の松原さんと和合・松原会談とはいかないもんかね」。
「・・・・?それをやると500円通行が止まりますか?」。
「ウーン。それは中身次第ですかね」。
「どんなことをお話になるのですか?」。
「それは会ってみないとわからないよ」。
「それでは困るんですよ。そんなアヤフヤな話は上にあげられません。内容をキチンと決めてもらわなければダメです」。
「その辺がどうもわからない、会う前に内容など決められないよ」。
理事長と会う話はかなり以前から出ていて、500円通行を止めるためであればやむなしと、真剣に検討するような雰囲気面会ったのですが、2人そろって記者会見をするという最後の提案を出すと一瞬にして関さんの顔がこわばってしまう。
長い付き合いなので顔が見えずとも様子は手に取るようにわかります。
彼は、「いいですか、和合さんは我が方からすると犯罪者ですよ、当方の理事長と共同で記者会見などするわけにはいきません。でも、本当に600円を払ってくれるのであれば考えてもいいですよ」とあきれたように言います。
いかに500円通行で参っているのかがよくわかります。
毎度のことなのでセリフの順番まで決まってるのですが、飽きもせず繰り返し楽しんでいます。

●6年もかかって和合さんに慣れた

ただ、この時は別のテーマがありました。
「ところで関さん、値上げの公聴会をやるそうだけど?」。
「いや、相変らず情報が早いですね。やりますよ、今年はやります。今年こそ値上げをしないとやっていけませんからね。和合さんのおかげで当方は被害甚大です。今年はやります!」。
「わかったわかった、あんまり興奮しないで。ところで、その公聴会に僕を出してくれないかね」。
「傍聴人としてですか?」。
「冗談だろ関さん、そんなものを聞いてどうするんだよ。公述人として意見を述べさせてもらいたいんだよ」。
「また、それはどういうことですか?いつものダボラですか?待てよ、和合さんを出すと我が方にどんな利益があるのですか?」。
いつになく慎重です。持ち上げられたり、落とされたりしながら長い間、私と付き合ってきた彼は、冗談の中でも、筋の通った真実があることを経験から知っているのです。
他愛のない無意味なおしゃべりから、その真実に耳を傾ける。そこで、「全く関さんは素晴らしい。これだけの逸材を、公団の調査部などに置いておくのはもっ たいない。これは国家の損害です。あなたは当然のごとく理事長の器である」などというと、困ったように哀願します。
「和合さん、間違っても他の職員にはそんなことを言ってもらっては困りますよ。私だって6年もかかって和合さんに慣れたのですから。他の人では免疫がないからビックリしてしまいますよ。私も生活がかかっていますからね、頼みますよ。それで我が方の利益は」。
さすがにプロです。本筋は決して外しません。
そこで私は、「関さん、よく聞いて下さい。私は首都高利用者の代表みたいなものだよ。私に演説をさせてみなさい、それだけで反対世論のガス抜きになるよ。 どうだろう、一つ懐の深いところを見せてみないか」というと、意外にも「うーん、そういう考え方も確かにある。少し考えてみる」と答えました。
おっ、これはまるで脈のないことではないぞ、よしよし。
建設大臣へコミットせよ
しかし町の発明家はこの程度の種まきで、芋が出てくるのを今か今かと待つようなことはしません。
次の手を着々とうちます。
まず、千葉の小川国彦前社会党議員に連絡をとりました。
小川氏は600円の値上げ後、首都高の無料交通券などで国会で公団を追及し、マスコミに話題を提供した人です。
それにしても皆さん、信じられますが。無料交通券があるのですぞ。
それも年間121万枚、総額7億2720万円!政治家諸氏にも1万1400枚も配布されている。
私の100円不払いなぞ可愛いもんで、大腸菌とキングギドラほどの違いがあります。
なお、キングギドラは怪獣映画ゴジラに出てくる体重2000トンの宇宙生物です。
その頃からの親しいお付き合いです。
しかし、彼は前回の選挙で落選してしまい、ただの人になってしまいました。
社会党代議士として衆議院会館に鎮座ましましていたらどんなに心強かったか。
事実、日本のお上社会で彼の存在は誠に力強かったのです。
さしもの首都高速道路公団も、和合にはうかつに手を出せない」というような感じになったのですから。
小川代議士の落選は当方にとって晴天のヘキレキでありました。
首都公団側は逆の意味でまことにすがすがしい晴天のヘキレキではなかったかと思います、などとまずは泣き言から始まります。
「小川さん、この大切な時期に落選してしまうものだから、やっときたこの千載一遇のチャンスを生かし切れないじゃないか」と、先ほどの経過を話し、どうしても値上げの公聴会で演説する必要があることを説きます。
そうすれば、500円通行が世論に対してより一層鮮明になり、問題定義が」大きくなる事を説きます。
最後に、「小川さんが落選したから、より大変な苦労をしているのだ。今度、もし、万一、再度、落選したらもう付き合わない」と脅して諦めくると、小川氏は苦笑いをしながら、わかったわかったという風に顔に近づけた手を左右に振りながらいいました。
「大丈夫だよ。五十嵐さんとは古くからの友達だ。非常に実直ないい人だ。強力に申し入れておくよ」。
前代議士の紹介・ファクス・そして・・・
数日が経過し、頃はよしと見て、五十嵐建設大臣にファクスを打ちました。
各大臣の顔ぶれを見ました。
心おどる気持ちで胸がワクワクします。

小川先生からの連絡があったかと思いますが、首都高値上げの件でゼヒともお願いがあります。
この渋滞解決のために何らの策なしの現状では、何といっても値上げは反対です。
とりあえず値上げ保留か、もしくは差し戻しとしていただきたいのです。
何時でも訪問し、ご説明致します。
何とぞよろしくお願い致します。
五十嵐建設大臣
和合秀典 94年8月9日

それからまたたくうちに10日間が経過しました。
時機到来です
。建設大臣へ電話をし、直接確認しなければなりません。
さてと、電話に向かって大きく深呼吸します。
精神統一を図ってからまず議員会館へ電話をします。
「五十嵐大臣をお願いします」と告げると、交換手が「社会党の五十嵐建設大臣ですね。お待ちください」と応じ、大臣の部屋につながりました。
彼はこの国の道路建設においては最高の権力者です。
この上はもう内閣総理大臣しかいません。
600円と決まっている首都高を500円しか払ってない男が、ついにこの国の組織の最高峰とコンタクトをするのです。
その世界がどんな世界なのか、果たして私に対してどんな対応をしてくれるのか、日本語で話してくれるだろうか、と未知への世界への興味は尽きません。
もしETとの遭遇があるとしたら、こんな気持ちであるのだろうと思います。
「もしもし、和合と申します。主都高のことで五十嵐建設大臣とお話しがしたいのですが」と話すと、「秘書の叶と申します。和合さんですね、小川先生から強力に承っております」。
アレアレ日本語だ。意味はよく通じるな。ETではなさそうだ。
「叶さんですね、今後ともよろしく。それで、どの程度のお話しを小川先生からお聞きになりましたか?私はどうしても主都高速道路公団の公聴会で公述人として意見を述べたいのです」。
「存じています。必ず大臣に申し上げます。しばらくお待ちください。」
「叶さん、このまま放っておくと、通行料金問題はとんでもないこととなります。とにかくよろしくご配慮ください。
さあ、とにかくここまで来ました。
この日は8月19日で公聴会の開かれる9月6日まで17日と十分な時間が残されているわけではありませんが、待つしかありません。
はやる気持ちを抑えて、じっと待ちます。
それでも1週間後、再度問い合せると、「話しは通してあります。建設省道路局有料道路課へ連絡してください」。
やったぜ。間髪を入れず、主都高の関さんへ電話をすると、「驚きました。前代未聞ですよ」と興奮気味です。
「和合さんの住所など必要事項は私が建設省へ連絡をしておきます。書類が届きますので必要事項を記入の上、返送してください。時間があまりありません、急いでください」。
翌々日郵送されてきた書類に必要事項を記入し、直ちに返送します。
とにかく時間がありません。
8月30日、建設省の宇野氏より、書類記入欄の公述内容をもう少し詳しく書いて欲しいとの電話がありました。
この前代未聞の出来事に、宇野氏もなかなか好意的で、「時間もないことですので、書類は届いたことにしておきます。急いでください」といってくれました。
こういう書類の記入は面倒くさくて元来苦手で、公述内容の欄には、今回の値上げには反対です、とだけ書いていました。
公述人に決定!
皆さんの好意的な協力に感謝しながら再度詳しく記入の上で投函、仰々しくも配達証明付きで公述人証が届いたのが、明けて9月2日のことでした。
公聴会とは元来、広く公に皆の意見を聞くことで、何でこんな大層な公述人証など必要なのでしょう。
こんなものをもらって喜ぶ人がいるの?ところがいたのです。
それは次回に。
何はともあれ、公聴会当日の4日前にして、ここまで来ました。
しかし最後の不安が残ります。
まだ安心できません。
最後の最後の時間に連絡があり、「和合さん、まことに申し訳ありません。検討した結果、不適当となりました。次の機会にご意見を拝聴させていただきます。 なにとぞ当方の苦しい立場をご理解下さい。よろしくお願いします」などと、絵に描いたようないんぎん無礼な電話があるにきまっています。
油断は禁物です。
静かに待つに限ります。
とにかく目立たないように、忘れ去られたように、ひっそりと息をひそめて待ちます。
動かざること山の如。
ついに9月4日土曜日正午のベルが鳴りました。
建設省は土曜日の仕事は午前中だけ、明日は日曜日、公聴会は月曜・・・。
ついにやりました!
発明は成功しました。
大声を出して叫びたい気持ちです。
これで和合秀典公述人の変更は完璧にないのです。
前代未聞物語の幕が静かにあがります。
さあ草稿作りを始めます。
名演説をする必要はありません。
しかし、主都高速道路公団に対しての初めての公の舞台です。
どうしてくれようか、どんな演説ををしてやろうか、といやが上にもきもちが高揚します。
はやる気持ちでワープロに向かい、一気に書き始めます。
言いたいことが怒涛のごとく脳細胞間を駆け巡ります。
そこから湧き出されるエネルギーで瞬く間に思考世界が飽和状態となるのです。
さあどうなるのか、ドスコイ、ドスコイ。

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